INNOVATIVE CITY FORUM INNOVATIVE CITY FORUM

キックオフ ディスカッション

アーティストの感性と各界のオピニオンリーダーが描く未来像を通じて、「豊かさとは何か?人間とは?」という根源的な問いを投げかける。森美術館では「未来と芸術展」が開催されたが、その展覧会と呼応してICFでは未来志向の議論の場として本セッションが設けられました。キックオフでは、南條館長よりその趣旨が説明され、また3つの分科会の各モデレーターより半年間の勉強会の様子が紹介されました。未来を考える上で、建築、ライフスタイル、そして資本主義という多様な切り口の存在を確認しながら、人間の生きる意味、その目標とも言える幸福とは何か、それはかつてと同じ幸福なのか、それとも今の時代には新たな幸福が登場してきているのか、誰の立場での幸福か、といった根本的なを問いについても考える事の重要性を共有する時間となりました。

分科会1:都市と建築の新陳代謝

モデレーターの建築史家・五十嵐太郎氏のもと、建築家やアーティストが集い、建築のデジタル化の課題として、高度な技術があっても簡単に建築物を作る許可が下りないことや、異分野との連携が無ければ実装までに至らないことが共有されました。また、日本では建築は工学部の管轄になる一方、欧米では建築学部として独立し、哲学や環境、文化についても習得する学際性が指摘され、現代的なメタボリズムを志向するなら、日本でも建築をそういう視座で捉えるべきといった声があがりました。

分科会2:ライフスタイルと身体の拡張

モデレーターを務めた、アートサイエンスメディアの編集長である塚田有那氏は、「未来と芸術展」の展示作品を紹介しながら、「私たちはAIやバイオテクノロジーに何か得体の知れない脅威を感じるが、同時にこれらのお陰で『人間とは何か?生命とは?』という本質的な問題を真剣に議論できるようになったのではないか」と語りました。また、繋がり過ぎることで感情的になりやすいSNS上では、人と人の間にAIが配置されることにより、コミュニケーションの緩衝材になり得るといった側面も紹介され、ポジティブ思考の重要性が確認されました。

分科会3:資本主義と幸福の変容

NHKドキュメント「欲望の資本主義」などを企画してきた丸山俊一氏や、アーティスト、社会・経済学者が中心となって、「資本主義≠幸福」に気付き始めた人々の価値観について、議論が展開されました。その中で、丸山氏は、欲望に駆られた結果、私たち人間は科学やデータにまるで奴隷化されてしまったという史実を述べながら、アートの可能性を説きます。アートには、人の固定観念を解放させる力があり、今後より価値が増すのでないかと。その視点に呼応した参加者たちと、アートの内面性に着想した議論が進み、精神をクリアにリセットするという意味で、「アートはゼロへの欲望」というキーフレーズも生まれました。

フィードバックセッション

分科会を振り返る本セッションでは、森美術館の「未来と芸術展」に連動したプログラムであるため、各セッションを通してアート作品や未来思考が触媒となって、多くのインスピレーションが生まれたことが共有されました。その中で注目されたのは、時代にマッチした倫理観です。今のままでは、遺伝子工学やブロックチェーン、AIといった先端領域について判断できず、進展を遅らせてしまうといった問題点が浮かび上がったのです。そして、南條館長は、今まで常識だと思っていたあらゆる物事を、デジタル化やポスト資本主義というフィルターにかけて見直す必要があると唱え、Future and the Arts Sessionを締めました。

その他の開催レポート

関連事前インタビュー

読み物一覧