バイアスと情報量の少なさが採用を歪めている
AIやビッグデータを、人事採用の現場に持ち込もうと思ったきっかけは、大きく2つあります。1つが、日本の採用に横たわるバイアスの存在です。他の国と比較して違和感を強く覚えるのが、学歴と女性に対するバイアスの強さ。とりわけ優秀な女性は日本では過小評価されています。例えば、会議でも、日本企業の場合は出てくるのが男性ばかり。外資系企業なら、半分近く女性が出てくるのが普通です。講演会でも、経営者系だと聴衆の95%くらいが男性で占められます。これって異常です。日本では、女性はこうあるべき、という「べき論」が根強かったりしますが、そこにはなんのファクトも無い。思い込みの部分が大きいですよね。
私自身の米国や英国での職務経験から考えて、これでは世界で競争できないと思いました。言い換えると、こういった人が人を評価をする際のバイアスが、社会の多様性、ひいては結果としてイノベーションを阻害していると感じたのです。バイアスを無くすための手段として、AIやビッグデータを活用できないかと考えるようになりました。
もう1つは、人事採用における情報量の少なさです。採用において指標となるのは、職務経歴書とその時のインタビューだけで、情報量が極めて少ない。それが、いろんな意味でのバイアスを起こす原因にもなっていると思います。もし自分の過去のデータ全てが可視化されていて、見せたいところをちゃんとファクトとして切り出せれば、すごくお互いにとって幸せですよね。コミュニケーションも円滑にできますし、より多くの情報を使って採用ができるわけで、思い込みを否定でき、人の可能性を伸ばしていけます。そっちの方が絶対にいい。人事に関する膨大なデータを集め、相手に渡せる仕組みが必要だと思いました。