インバウンド増加がもたらす都市の国際化、その光と影
2020年に五輪を控えている東京では国を挙げての一大イベントに向けて、現在、様々なシミュレーションが行われています。例えば、オリンピック期間中は連日100~200万人の人間が東京の中を動き回ることになると試算されました。そうなると当然、交通規制をかけなくてはいけなくなるわけですが、部分的に首都高速を止めた実験では、一般道の交通量は通常時の1.5倍にも達してしまうことが判明したんです。五輪は一時的なものですが、増え続けるインバウンドを考慮すると、想定されるありとあらゆる都市問題について具体的に考えなくてはならないステージに私たちはさしかかっているのです。
ダイバーシティ問題もその1つです。2013年に五輪開催が決定して以来、海外からの注目度が高まり、観光客数も大きく増加しています。今、東京だけでも年間1,300万人超の外国人観光客が訪れており、彼らが情報を拡散することでさらなる訪問者を呼び寄せるという循環が生まれつつありますね。しかしながら、外国人観光客の急激な増加が混乱を生じさせることもわかってきました。インバウンドが増えることは東京の魅力の証明ですので喜ばしいところですが、その一方で社会問題を引き起こす一因となっていることも、ここ最近見えてきています。
インバウンドが増加すればその分異なった文化が接触するため、大なり小なり混乱が起きる可能性が生じます。ニューヨーク、パリ、ロンドンなどの国際的な大都市では、歴史的に多民族が入り混じる環境があったこともあり、異文化同士の軋轢が存在するということが当たり前の認識なのですが、東京はまだその経験に乏しい。つまり東京は異文化流入による弊害、軋轢をこれから本格的に経験することになるんです。