ICF 2018 に向けて - 市川宏雄氏コメント

ICF2015では、ロンドン、ニューヨーク、パリから都市の専門家を招聘して、「グローバル化と都市のアイデンティティ」について議論をし、ICF2016およびICF2017では、聴衆参加型のブレインストーミング・セッションも導入しながら、「テクノロジーとライフスタイル」について、オープンな議論を重ねてきました。

過去のICFでの議論を通じて導き出した20年後の東京に対するメッセージは、「洗練されているけど、ちょっととがってる」―そんな東京の姿でした。2018年は、そのメッセージを受け止めます。

東京は、江戸開府以来、400年以上にもわたる長い時間の連続性の中で、今日のような巨大な世界都市へと発展を遂げてきました。

それは、江戸のまちづくりにはじまり、明治維新後の西洋化と近代化、関東大震災や東京大空襲からの復興、東京オリンピックと高度経済成長など、長い歴史を通じて創出・喪失・蓄積されてきたものの結果としての東京です。

一方、近年急速に進むグローバル化や機能主義的な計画手法は、世界の都市を均質化させ、東京においても都市としての個性を喪失させている一面もうかがえます。

今後、グローバル化がますます加速する中、東京が独自に培ってきた歴史的なコンテクストを街づくりに活かしつつ、都市としての独自のアイデンティティ（東京らしさ）を創出し、新しい魅力を発信し続けていくにはどうすればよいのでしょうか。さらには、それを成熟時代の街づくりにどのように反映させていけば良いのでしょうか。

ICF2018では、“東京らしさ”という難解かつ主観的なテーマを主題とし、それに対する一つの答えを帰納的に導き出すために、これまでにない新たな試みとして、7月から8月に3回に渡るプレセミナーを実施し、聴衆の皆さんと一緒に、「建築と都市史」、「素材・デザイン」、「都市のエリア開発」というテーマについてオープンかつインタラクティブな議論を重ねてきました。

10月のICF都市戦略セッションでは、プレセミナーを通じて得られた専門的知見と主観的意見を総括するとともに、そこに新たな視点を加えながら、 “東京らしさ”に関して発展的な議論をしたいと思います。

ICF2018 都市戦略セッションプレセミナー

森記念財団都市戦略研究所は、Innovative City Forum(ICF)において、都市に関する議論を続けてきましたが、今年はこれまでにない新たな試みとして、ICFの前に「東京のアイデンティティ」をテーマとしたプレセミナーを3回開催いたしました。10月のICFではプレセミナーの総括を行い、さらなる発展的議論に繋げていく予定です。

プレセミナー開催概要

第1回
「建築と都市史」から考える東京のアイデンティティ
日程：2018年7月3日（火）

パネリスト
伊藤 毅 氏（青山学院大学教授）
黒田 涼 氏（作家、江戸・東京歩き案内人）

第2回
「素材・デザイン」から考えるアイデンティティ継承の柔軟な発想
日程：2018年7月30日（月）

パネリスト
東 利恵 氏（建築家、東環境・建築研究所 代表取締役）
榊田 倫之 氏（建築家、株式会社新素材研究所 取締役所長）
石井 リーサ 明理 氏（照明デザイナー、I.C.O.N.代表）

第3回
「都市のエリア開発」から考える東京のアイデンティティの多様性
日程：2018年8月27日（月）

パネリスト
井上 俊幸 氏（三菱地所 開発推進部長）
新原 昇平 氏（三井不動産 日本橋街づくり推進部 上席主幹）
太田 雅文 氏（東急電鉄 都市創造本部 渋谷戦略事業部 副事業部長）
御厨 宏靖 氏（森ビル 執行役員 都市開発本部 統括部長）